最近の活動

 

—認定動物看護師の公的資格化に向けた活動方針—

 

 動物看護職が国家資格になることは長年の悲願であり、動物看護職が社会的により広く認知され、さらには職域の確保と処遇の改善に向けても最も重要な課題である。

 本機構のホームページ、「設立経緯」にも書かれているように、農林水産省、日本獣医師会等におけるチーム獣医療の重要性を背景とした動物看護職の在り方に関する様々な検討を経て、日本獣医師会が中心となり、平成21年に日本動物看護職協会が設立された。この組織を母体として、動物看護職の社会的活動をより活発化させるための行動が開始された。一方、従来より国内諸団体がそれぞれ独自の試験を実施して動物看護師を認定してきたが、より均一な認定方式を進めるべきであるとの議論を基に、共通の試験を実施してその合格者を認定動物看護師として登録することになった。そのための組織として本機構(本年2月に一般財団法人 動物看護師統一認定機構として認可された)が設立された。さらに、動物看護師を目指す学生が学ぶべきコアカリキュラムが策定され、これに沿った教育を受けることが統一試験の受験要件となった。

 国家資格は、その職域が国民一般の生活に利益になると認識されている必要があり、それを規定する法律が必要である。その法律に基づいて定められた教育を履修し、試験が実施され、その資格を有する者として定められた人数が登録される。しかし、動物看護職に対する社会的認知と国家資格を含む公的資格化に関し、まだ多くの課題が残されていると言わざるを得ない。

 

 それでは、何らかの形で公的資格と同様の資格を得ることは可能であろうか。まだその道筋は明確ではないが、チーム獣医療を実施する上で何らかの資格認定を得ることはきわめて重要である。また、何らかの公的資格と同様の資格化を達成するための必要条件はどのような点であろうか

 

 第一に、共通の教育を受け、統一試験を基に認定された動物看護師(以下、認定動物看護師)の職務範囲・職務権限を明確化することである。平成22年度に獣医療関連団体により設立された「獣医療提供体制推進協議会」が、小動物獣医師だけでなく、産業動物臨床ならびに家畜衛生・公衆衛生に関わる獣医師に広くアンケート調査を行い、獣医療における獣医師とパラメディカルスタッフとの協力体制に関して調査を行っている。そこでは、獣医師が動物看護職に求める役割が明らかになっており、今後これらのデータ等を基に、チーム獣医療の中で認定動物看護師が行うべき役割や望まれる獣医療行為に関し、特に日本獣医師会等と議論を深める必要がある。

 

 第二に職務範囲に関わる教育体制が整備され、適切に実施されていることがきわめて重要である。機構が推奨するコアカリキュラムに関しては、そのスタートから数年を経た現在、内容に関する見直し作業が始まっている(カリキュラム検討小委員会)。この委員会では、機構推奨カリキュラムの内容だけでなく、動物看護師養成を行っている8大学における標準カリキュラムとのすり合せも行うこととなっており、来年にはコアカリキュラムに関する新たな案を作成して、広く意見を求める予定になっている。少なくとも、今後決定する職務範囲との整合性を含め、社会的に認められるようなカリキュラムの改善が必須と考えている。

 

 第三に、これらのカリキュラムに沿った教育の質と量が確実に実施されていることを社会に示す必要がある。この2年間、専門学校における第三者評価を行う体制の構築やその試行が行われており、本機構としては、その試行に全面的に協力しつつ、動物看護職教育に対する第三者評価の在り方を検討している。

 現在、大学においては大学全体(機関別評価)、ならびにその教育分野ごと(分野別評価)に第三者評価を行うことが求められている。これは教育の質を担保し、保証するために必須のことであり、動物看護職教育においても国家資格・公的資格を目指す以上、避けて通ることはできない。今後この事業による評価の試行、ならびにその結果の検討を踏まえ、各専修学校に対する動物看護職教育の分野別評価を実施する予定である。これは従来実施していたカリキュラム等の書類審査に加え、実際の教育現場についての訪問審査を伴うものであり、これによって、より確実に教育を受けた者が統一試験合格を経て、認定動物看護師として登録されることを社会に示すものである。

 一方、動物看護師養成を行う大学は、この春の全国動物保健看護系大学協会の総会を経て8大学に拡大した。8大学においては、大学の相互評価体制がすでに作られており、当面はこの評価に基づいて教育の質を相互に評価することになる。しかし、将来的には、これらの大学においても何らかの形で第三者評価を実施する体制を構築する必要あると思われる。

 

 第四に、認定動物看護師登録のためには、公平で適切な統一試験の実施が必要である。統一試験は、現在年1回、全国12会場で行われている。この試験のため、機構の中には試験委員会が設置され、その下に試験問題策定小委員会が設置されている。この小委員会では、全国の動物看護師教育に関わる教員に試験問題作成を依頼し、その中から適切な問題を選択し、またその修正作業を行い、最終的な試験問題を決定している。試験問題の作成、採点、ならびに合否判定は厳格かつ公平に行われており、信頼できる試験であると自負している。しかし、問題数は学説問題・実地問題あわせて120題であり、これだけで認定動物看護師の知識・技術を全て判断することはできない。したがって、受験要件にある、動物看護職教育コアカリキュラムの修了ないし修了見込み、という前提がきわめて重要である。すなわち、規定されたカリキュラム履修と試験合格が認定動物看護師登録の条件である。

 

 第五に、公的資格化には、獣医師、動物医療関連業界、飼い主、一般国民に認定動物看護師の役割や重要性に関して広く認識されることが求められる。すなわち、認定動物看護師がチーム獣医療実施のため、きわめて重要な役割を果たしていることを広報誌、国民の理解を得て自律的に推進することも、認定動物看護師を公的資格として国が認めるために必要不可欠である。

 

 第六に、現在の動物看護職の活動はほぼ小動物臨床の現場に限られている。今後、公的資格として社会から認められるには、その職域がより広い分野であることが好ましい。現在、文科省の予算による事業として学び直し教育プログラムについて試行が開始される予定であり、その中には畜産分野に関する学び直しプログラムも含まれている。この目的は、動物看護職の現職ないし離職者に対し、畜産学に関する講義を通して畜産分野に目を向けてもらい、人工授精師や牛策定師等の関連職域との調整を図り、将来、この分野における動物看護職の活動を拡大することにある。

 すでにその萌芽的動きがスタートしており、酪農学園大学卒業の認定動物看護師が昨年度と今年度2名ずつ家畜共済の臨床現場に就職した。将来的にも畜産関連の臨床分野や家畜保健衛生分野において動物看護職が活躍して欲しいと願っている。より広い分野で認定動物看護師が活躍することは、公的資格として認められるためにも重要なことであろう。

 

 以上のような多くの局面を解決する活動と同時に、公的資格を実現するための具体的な活動をどのように進めるか、も検討しなければならない。動物看護職の活動は獣医療と密接に関わっており、獣医療に関わる主幹官庁は農水省である。したがって、動物看護職に関わる団体が団結して諸課題の解決に向けた実績を積み上げ、それを基に農水省と交渉を進めることが重要であろう。

 日本獣医師会では、昨年度に認定動物看護師の公的資格化に向けたロードマップを作成し、それに向かって様々な活動を開始している。このロードマップを基に、現在、日本動物看護職協会、日本獣医師会、本機構、および動物看護師養成を行っている専門学校ならびに大学の代表者等が、動物看護職を取り巻く課題解決に向け、意見交換会を持つ予定である。意見交換会には、オブザーバーとして農水省が出席予定である。

 これらの活動を経て、できるだけ早期に(現状では、平成30年ないし31年)何らかの資格化を達成することが現在の目標である。

 

 今後、これらの活動に関し、多くの団体・組織に対し、多くの情報の提供や協力を求めることになると思われる。是非多大な支援を基にこの問題を進めて行きたいと考えている。